【SR】秘密
友人につられて自分の顔も曇るのがわかる。


…………俺だって、以前から本当のあの娘を知っているんだ。


思い出させたくは無いが……事が事だ。


それに、唯一無二の親友の真摯な頼みを無下には断れない。


「……簡単な事を頼むだけだろ。危険な事は無いはずだ」


自分にも言い聞かせる様に呟いた。


「……そうだな。さあ、行こう」


そうして俺達は、桜の待つ店へ向かって歩き出した。





「いらっしゃいませ。あ、こちら夕べもいらっしゃいましたね。今日もジェミニへ?」


ビルの入口で、何階にどの店があるか案内する為に立っていると名目をつけて、呼び込みをしている黒服にベンチコートを羽織った男が声をかけてきた。


よく覚えてるものだ。


「あぁ、こいつに話したら俺の指名した子が見たいって言うから」


友人を親指で指差す。


「俺の分もその子の指名につけといてよ。
とりあえずこいつの指名の子見たら他の子選ぶからさ。
いい?」


友人がそういうと黒服がにっこりと笑った。


「もちろんですよ。その女の子も喜びます。ご指名の女の子の名前は?」


「桜」


そういうと納得した様に頷いた。


「彼女は大人気ですよ」
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