【SR】秘密
そう言いながら掻いた黒髪は、洗いざらしでもすぐに乾きそうなほど短い。


がっしりした体格に、大きな声。


いかにも体育会系という感じのこの人と、落ち着いたオーラを纏う貴一さん。


全く逆の二人なのに、絆の様なものが漂っているのがわかる。


あたしにはもう……チクリと胸が痛んだのは、知らないフリ。


「女の子、あたしだけじゃつまんないですよね?
誰か呼びましょうか」


そう言うあたしを貴一さんが首を振って制する。


「……それは後で。少し、話があるんだ」


「話……?」


相変わらずの熱気の渦の中、このテーブルだけに冷たく異質な空気が流れる。


「……すごい、盛り上がり様だよね、この店」


貴一さんに言われてそれとなく店内を見回す。


真っ赤な頬をして楽しげに声を張り上げる客。


同じ様にハイテンションなノリで、仕事も忘れて飲み続ける女の子。


自分で注いで飲んでる客も少なくない。


指名で来ている筈のテーブルには、上に名刺の置かれたグラスはそのまま、指名の子が戻らないのも気付いていない様だ。


今日はあたしはあまり飲んでいないせいか、その光景に圧倒される。


この店、こんなだった?


気軽だけど、接客には厳しくて……。
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