【SR】秘密

木枯らしが自由気ままに舞い、汚れきった空気を奪い去る。


遮る雲は風に消され、晴れ上がった夜空には、煌々と自己主張する星座達。


そんな神秘を隠蔽する、都心から程近い場所にあるネオン群。


闇に途絶える事の無い、ＬＥＤの海の中。


駅からほんの少し離れた、奪い合う様に立ち並ぶ店舗ビルの一角。


ここは夜専門の商店街にある店。


【Club Gemini】


ここは、いわゆるキャバクラ。







「桜ちゃーん、ご指名入りました～、お願いします！」


まだオープン間もない時間に、あたしを呼ぶボーイの声。


「はぁい！」


テーブルに置いてあった携帯を小さなポーチに入れ立ち上がる。


周りには、ソファーに座るたくさんの女の子。


まだあどけない顔をして、友達と二人でペラペラと話している体験入店の子達。


必死に携帯に向かって親指を酷使している者に、普段より１オクターブは高い声で電話してる者。


一人でぷかりと煙草の煙りを燻らせている子に、小さな手持ちの鏡と睨めっこしてる子。


ほとんどが一度ちらりとあたしを見遣る。


まだお客さんの少ない時間、小さな個室の待機席。