【SR】秘密
契約
……・……・……・……
あたしの耳はおかしくなってしまったのだろうか。
だんだん、貴一さんの声が遠のいていく気がした。
する筈もないお線香の匂いが鼻を掠める。
「……その違法ドラッグが、あの辺の歓楽街でまた流行り出したって噂があるらしい。
特有の症状が出てる人間が、何人か捕まったそうだよ」
最近の頭痛を思い出す。
店にいると得られるあの高揚感……。
ぎゅっと手を握り締める。
「……それが、うちのお酒に?」
声が震えるのは止められなかった。
貴一さんの手があたしの手に被さる。
「可能性の話だ。ジェミニだけとも限らない」
ふいに悪夢の記憶が、勝手に鍵を開けて顔を出す。
『交通事故……?』
『そうです。検死の結果…………。』
命の火が消えた体が語った事実。
「……あたし……ほぼ、毎日飲んで……。」
『この人の様にはならない』
『自分の力でのし上がってみせる』
空耳に眩暈がして力一杯目を閉じる。
「まだ、決まった訳じゃない。
それに、桜の顔に特有の症状は出てない。
だからあいつも桜に頼んだんだ」
慰めだとわかっていても、少しほっとする。
あたしは、まだ大丈夫…………。
「悪い待たせた。……事情は、貴一から聞いた?」
刑事さんが戻ってきてあたしに尋ねる。