【SR】秘密
歪んだ心
……・……・……・……
漂うベルガモットの香りでいくらか頭がすっきりする。
あたしの言葉に固まっている貴一さんの口が少し開いた。
「……知ってる?……何を?」
震える、声。
「全部、だよ」
貴一さんは自分を落ち着かせるように煎れたてのコーヒーを一口啜った。
「……全部って……。」
ひどく驚いた顔をしている。
当たり前か。
そんな素振り、全く出さなかったし。
本当は、最初から気付いてた。
「あなたの事も、……あなたの気持ちも」
貴一さんの喉元がごくりと鳴ったのがわかった。
座いすからずるりと身体をずらし、テーブル越しにぺたんと座っているあたしににじり寄ってくる。
「俺の……気持ち?」
あたしの頬に向かっていた手が躊躇して、聞こえたのは掠れた声。
ぼうっと熱を帯びた瞳で見つめる貴一さんに、もう一度繰り返す。
「そう、全部……。」
知ってるの。
宙ぶらりんで固まっていた手を掴み、あたしの頬にそっと触れさせる。
その瞬間、思い切り抱きすくめられた。
「きゃあっ」
予想外の衝動的な行動に、部屋を揺るがす衝撃音。
「桜っ!!」
鍵を閉めていなかった玄関のドアを力一杯開けて入って来たのは…………。