【SR】秘密
「……ヤマト、だったの?あの、手紙……。」


「そうだよ。俺がどれだけ桜を愛してるか分かっただろう?
待ち遠しかったよ、桜が俺の物になる今日が……。」


感慨深い顔をして、固まったあたしの左手に指輪を近付ける。


「桜も、俺を愛してるから今日頼って来たんだろう?
……運命だと思ったよ」


「違う、あたしはただ……ヤマトは体格もいいし……。」


するりと指輪が嵌められた。


「違わない。そうだろ?
…………さぁ、これで桜は俺の物だ」


ヤマトがうっとりとした顔であたしを見つめる。


焦点の定まっていない瞳で。


狂気が顔を出して来る音が聞こえる様だ。


あたしはじりじりと後ずさった。


「……なんで逃げる?俺はあの有名な運送会社の長男だぞ?
不自由もしない」


『女は勝ち組じゃないと意味が無いの』


あの人の声が頭の中で木霊する。


「……そういう問題じゃないわ。
ヤマトと結婚なんてできるわけない」


とん、と窓にあたしの背中がついた瞬間、ヤマトがにんまりと笑った。


「言ったろ、本当の桜を知ってるって。
いいのか?今ばらされても。
……いや、その方が一緒になりやすくなるかな?」
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