【SR】秘密
『本当に出来が良い子で良かったわ。いい高校にいい大学。
はやく楽させてちょうだいよ……』


「もうハタチだなんて嘘もつかなくていい。
……18歳の誕生日、おめでとう」


きらりと光る指輪に唇が落とされるのをぼんやりと眺めながら、脳内が真っ暗になった。


「……こんな陰湿なやり方する人と、結婚なんてしない」


静かに冷たく言い放った言葉に反応したのか、するりと手が自由になる。


“結婚”という言葉が何より嫌い。


弱い者同士がわざわざ一緒になって、ほんの数年幸せなフリを演じてから醜く朽ちていく不幸の象徴。


あたしは、自分の人生を誰かに委ねたりなんかしない。


「……そうか。まぁ万が一そんな事があってもいいように、きちんと準備してきたんだ。
まさか今日いきなり、桜本人に誘われるなんて思ってなかったから、本当はこうするつもりだったんだけど……」


ヤマトの手に握られた光る物を見て目を見張った。


指輪とは異なる、鈍い光を放つそれは、いともたやすくあたしを貫くだろう。


「最初の予定通り、ちゃんと桜が眠ってから連れて行く事にしよう。
赤いドレスを来たお姫様になれるんだよ、桜……」


……目が、目がおかしい……。


あたしは背中にぴったりとくっついた窓を、後ろ手にゆっくりと開ける。


「やっと、俺だけのもの……。」


急いで開け放した窓から冷たい風が入り込み、カーテンが羽ばたいて視界が遮られる。


そして、あたしに衝撃が走った。
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