【SR】秘密
想い
……・……・……・……
……俺は夢中だった。
肩に衝撃があったのは分かっていたんだ。
だが、頭に血が昇り過ぎて何もコントロールできない。
血が沸騰するというのは比喩表現なんかでは無い事を初めて知った。
殴りつけているこの右手も、手から伝わる鈍い刺激も爆発的に怒りを高める。
「貴一!もういい、止めるんだ!」
怒りのぶつけ処がふいに遠ざけられる。
「貴一さん……。」
弱々しい声で呼ばれて我に返った。
「桜……怪我は?」
「あたしは平気。それより貴一さんが……。」
桜がそっと触れた二の腕を見て、血が流れているのに気付く。
「離せ!どういう事だ!」
窓とは逆の玄関から入ってきた友人が男を抑えきれずに四苦八苦してる。
「くっ……こいつ、なんて力だ。おい貴一、平気ならちょっと手伝ってくれ!」
男は落ち窪んだ目と青白い顔をしながら白目だけ血を走らせてもがいている。
「もう少しなんだ、もうすぐそこにあるんだ!」
段々と男の口呼吸が荒くなったと思ったら、急にがくんと反発が無くなった。
「貴一、悪いが抑えててくれ。応援を呼ぶ」
そう言ってさっき俺を連行した制服姿の友人が電話を掛ける。