【SR】秘密

……・……・……・……



「黙認するわけにいかないわよね。
教師なんだもん。
…………ねぇ、先生?」


あたしがそう言うと、心底驚いた顔をする貴一さん。


「まさかあのぴったり七三の眼鏡教師が貴一さんだったなんてね。
気付いた時にはびっくりしたけど、貴一さんもよくあたしに気付いたね。
他の先生は気付かなかったのに」


最初に店に来た教師軍団。見ない顔もいくつかあったからただの関係者だと思ってたけど。


「……いつ、わかったんだ?」


そう聞かれ、ちらりと光る時計を一瞥した。


「家に送ってくれた時、言わなくてもスイスイ住宅街の中のこのアパートに車をつけたでしょ。
知ってて当然よね、あたしの担任の溝呂木先生と家庭訪問に来たもんね。
……あとは、秘密。
ねえ、何故夜の仕事を辞めさせようとしなかったの?」


少し沈黙してから、貴一さんが口を開いた。


「……桜は目立つ存在だし、すぐにわかったよ。一年生の俺の受け持ってる生徒に、杉原っていう桜そっくりの子がいるんだ。
外見も……事情も」


それなら知ってる。何度かお姉さんですか、と声をかけられた事があった。


本人を初めて見た時は、鏡を見ているかの様な錯覚に陥ったっけ。


………事情?


「あの事故も……同じ時期に起こったんだ」


事故。


脳裏に押し込めていた過去がフラッシュバックする。
< 43 / 52 >

この作品をシェア

pagetop