【SR】秘密
……・……・……・……
「黙認するわけにいかないわよね。
教師なんだもん。
…………ねぇ、先生?」
あたしがそう言うと、心底驚いた顔をする貴一さん。
「まさかあのぴったり七三の眼鏡教師が貴一さんだったなんてね。
気付いた時にはびっくりしたけど、貴一さんもよくあたしに気付いたね。
他の先生は気付かなかったのに」
最初に店に来た教師軍団。見ない顔もいくつかあったからただの関係者だと思ってたけど。
「……いつ、わかったんだ?」
そう聞かれ、ちらりと光る時計を一瞥した。
「家に送ってくれた時、言わなくてもスイスイ住宅街の中のこのアパートに車をつけたでしょ。
知ってて当然よね、あたしの担任の溝呂木先生と家庭訪問に来たもんね。
……あとは、秘密。
ねえ、何故夜の仕事を辞めさせようとしなかったの?」
少し沈黙してから、貴一さんが口を開いた。
「……桜は目立つ存在だし、すぐにわかったよ。一年生の俺の受け持ってる生徒に、杉原っていう桜そっくりの子がいるんだ。
外見も……事情も」
それなら知ってる。何度かお姉さんですか、と声をかけられた事があった。
本人を初めて見た時は、鏡を見ているかの様な錯覚に陥ったっけ。
………事情?
「あの事故も……同じ時期に起こったんだ」
事故。
脳裏に押し込めていた過去がフラッシュバックする。