【SR】秘密
「これで秘密の見納めね」


そう言った桜の背後には、沈みかけた夕日と真っ赤な空。


吹雪のように散る花弁に包まれた桜は、壮絶に美しくて思わず息を飲む。


「……もう、秘密じゃないだろ」


この進学校で夜のバイトをしてるなんて露呈してしまったら、間違いなく退学だった。


ましてドラッグの絡んだ事件。


ここでも桜の幸運ぶりが発揮された。


内々に処理してくれた友人に感謝だ。


「だって先生が“桜”なんて呼ぶから」


「……もう、先生でも無い」


ふて腐れた様に言う俺にくすくすと笑う。


これだけの進学校でトップクラスの成績を保つのには相当な努力を要する。


……無駄にならなくて良かったと心底思った。


「すごい花束だな。誰から?」


「あぁ、これ?一年の後輩。学校は違うけどバイトが一緒なの。
初めて会った時、“亜由美の双子のお姉さんですか?”なんて聞いてきたの。
歳が違うのに。
望っていう可愛い女の子。妬ける?」


半分ほっとして半分引っ掛かる。


俺が受け持っていた桜そっくりの杉原。


……あの子も、桜の様に乗り越えられればいい。


繰り返される悪夢は、どこかで断ち切る事はできるんだろうか……。


そう考えながら、目の前の桜を目に焼き付ける。


18歳の桜の、晴れ姿を。
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