【SR】秘密

……・……・……・……



眩しそうにあたしを見つめる貴一さんに笑顔を返す。


「……卒業、おめでとう。美咲。
これで晴れて大学生だな」


「ありがとう。……本当に、いいの?大学費まで出してもらうなんて……。」


全てが済んだ後、貴一さんは大学費も負担してくれると言った。


貯金があるから大丈夫だと言ったのに、引っ越し費用と家賃まで請け負ってくれて。


おかげであたしは一人暮らしにはもったいない程のオートロックつきの広いマンションでぬくぬくと過ごしている。


貴一さんはたまに部屋を訪れるけれど、あたしを優しく熱く見ているだけで、指一本触れる事は無かった。


「そうさせてくれ。……お母さんは?」


引っ越しの連絡をしたが、すでにあたしの知っている番号は使用されていなかった。


沈黙で悟った貴一さんはベンチから立ち上がる。


「条件があるんだ。……飲んでくれるか?」


「条件?」


「あの部屋で、俺と一緒に暮らそう。……駄目か?」


一緒に、二人で。


「駄目なわけ、ない……。」


涙を浮かべるあたしを、貴一さんがきつく抱きしめる。


「美咲、愛してるよ。ずっと一緒にいよう…………。」


いつかと同じ、冷えた身体に熱い吐息。
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