【SR】秘密
「貴一さん……嬉し……。」


そっと触れ合う唇は、段々と熱くなってくる。


狂った様に激しくなる貴一さんが、深く、深く…………。


流れ込んでくる想いを必死に受け止めるあたし。


どれくらいそうして居ただろう。


名残惜しそうにゆっくりと顔を離す貴一さんが、上を向いて黙り込んだ。


「……どうしたの?」


「……いや、桜ももう終わりだな。
まだこんな時期なのに、年々散るのが早くなる」


夕日に照らされて真っ赤に染まった桜が、とめどなく舞い散っていた。


あたしは、きゅっと抱きしめる手に力を込めた。


「いいじゃない。
今夜、満開の桜が咲くんだから」


不思議そうな目を向ける貴一さんに、続けて言った。


「カウントダウン、だよ。贈り物に【0】を刻んだの。
……見えない所にね。
確かめてみて……今夜」


あたしの言葉に身震いする貴一さんを肌で感じる。


「美咲…………」


「そうしたらきっと、満開の桜が見れるよ」


小さく舌を出して悪戯に微笑んでみた。


もう、教師と生徒は今日で終わり。


貴一さんは目を細めてあたしを眩しそうに見つめた後、一瞬で堪えきれない様にあたしの唇をついばむ。


まさぐる様に抱きしめる貴一さんの、為すがままに身を委ねた。


【0】をきざんだ一部が、酷く熱くなるのを感じる。


貴一さんしか確認できない場所の。


……きっと今夜、美しく咲いてみせるから。
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