【SR】秘密
眩暈
……・……・……・……
「桜ちゃん、送りの時間だよ。起きて」
あたしは低い声に揺さぶられて重い瞼をゆっくりと押し上げた。
「痛…………。」
軽い頭痛に頭を抑え、辺りを見回す。
閉店後の店内に、酔い潰れた名も知らない女の子達が所狭しと転がっている。
最近はもう見慣れた風景。
一年前は終礼をきちんと行っていたけど、客が増えると共にそれは失くなっていった。
次々と辞めて行く子に、新しく入店する子。
入れ代わりの早いこの業界で、名前を覚えるのは至難の技だった。
あたしが入店した当時からいるのはあと二人だけ。
「桜ちゃん、早く着替えて。
送りの車、もう出ちゃうよ」
店から無料で出る送りの車。
ほとんどがバイトの運転手の持つ車で、同じ地域の数人が乗って、一人ずつ家の近くに降ろされる。
…………やばい!これに乗り遅れたらタクシーになっちゃう!
慌ててフィッティングルームも兼ねた待機室に入り込む。
白いドレスを脱ぎ捨て、いつものスキニーのデニムに黒いカットソーに着替える。
ギリギリセーフで車に滑りこんだ。
…………まだ、頭がズキズキする……。
お酒は、あたしには合わないのかな。
だいぶ慣れたつもりでいたけど……。