貯金500万円の使い方
おにぎりを食べ終わるころ、8時のチャイムが遠くの方で鳴った。
今日はほとんどボールに触れていない。
何となく、こうして舞花の隣に座っていたかったから。
だからそれからもしばらく動かないでいると、
「朝練、行かないの?」
と舞花が聞いた。
「ああ、うん。今日の午前はバレー部が体育館使ってるから。今日は午後から」
「そうなんだ」
「うん」
それっきり、会話はなかった。
僕はただ、まだ舞花とこうしていたいなと思っていた。
すると舞花が小さな声で言った。
「あのさ、お願いがあるんだけど、今から時間、ある?」
舞花は言いにくそうに話しだした。
「午後の練習までなら空いてるけど」
「じゃあ、思い出巡りしていい?」
「思い出巡り?」
「うん。保育園とか、小学校とか」
「別に、良いけど」
それはそれで楽しそうだと思った。
舞花と一緒なら、何だっていいと思った。
「じゃあ、後ろ乗る?」
僕は目で自分の自転車を指した。
それを目で追った舞花は嬉しそうに「うん」と首を大きく縦に振った。