貯金500万円の使い方
大仏殿の外に出てようやくまともに呼吸ができたような気がした。
それは僕だけじゃない。
歩美も、舞花も。
外気を体いっぱいに取り込んで、大きく吐き出した。
「通れたのは私だけだったね」
舞花は得意気な顔を僕たちに向けた。
「良かった」
舞花の視線の先には、雲一つない青空が広がっていた。
その空の色で、秋の空気がいかに澄んでいるかが僕にも感じ取れた。
秋の風を受けながら、舞花はそんな空に吸い込まれるように歩き出した。