貯金500万円の使い方


 子育てにはお金がかかる。

 今の時代、大学まで行くのが普通だ。

 少なくとも、それなりに有名大学に進んだ僕たち夫婦にとって、それは普通だった。

 国立にしろ私立にしろ、文系にしろ理系にしろ、お金がかかる。

 芸大や医大に行けばそれ以上。

 一人暮らしをしようものなら、さらに。

 留学の可能性だって。


__子育てには一体いくらお金が必要なのだろう。


 本には参考金額が明示されているけれど、これで済まないのは明白だった。
 
 僕たちは自分たちなりに計算をした。
 
 人生のありとあらゆる出来事を想定して。

 とりあえず大学までは安心して出してやりたい。

 私立、医大、芸大……どんな大学に行ってもいいように。

 将来の可能性を広げるために、習い事も必要だ。

 小さいうちから塾に通っている子もいるんだから、差がついて勉強嫌いにならないようにしないと。

 気は早すぎるかもしれないけど、結婚式は盛大にやらせてあげたい。

 仕事と両立しながら安心して子育てできるようにサポートもしてあげたい。

 それからこれはあまり考えたくないけど、万が一僕たちが早く死んでしまったとき、残された彼女のためのフォローも必要だろう。


 結果、お金はいくらあっても安心できない、という結論に達した。

 生まれてくる子どもには、好きなことを思いっきりさせたい。

 何不自由なく育てよう。

 それが、僕たち親の責任だと思った。

 その気持ちは、子どもが生まれる前からどんどん強くなっていった。


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