貯金500万円の使い方
僕は足に力を込めて坂を上った。
そして、舞花の隣を歩くように意識した。
「まあ、ゆっくり行こうよ」
__そう、まだ、大人になんてならなくてもいい。
上がった息を整えながらそう言って、舞花の手を握りなおした。
その感触を確かめるように。
__こんなに、大きくなってしまったのか。
もう小さな手を思い出すことはできない。
だから僕は、決して忘れないと決めた。
12歳の、舞花の手を。