That's because I love you.

嫉妬

11月中旬。
昼休み、大学の1階の廊下で偶然会った明広とまりあは、明広のスマホを二人で覗き込みながらその場で立ち話をしていた。

「この日本製のワイヤレスイヤホン、やっぱいいなー…。」
「買い替えたいって前から言ってましたもんね～。」
「そう。どうせなら高音質にこだわって、長い間使えるの買いたいと思ってさぁ。でも高いんだよな…今ちょっと金貯めたいし、来年まで我慢するか…。」
「何か見た目も真っ黒でかっこいいですねぇ。明広さんに似合いそう～。」
「だからね、性能を見てるの僕は。確かに見た目も良いけどさぁ。」
「ーーーあの、望月さん。ちょっといいかな？」

二人で笑い合っていると、まりあがふと一人の男に声を掛けられた。

「加賀見くん。どしたの～。」
「明日の2限、グループワークでしょ？資料作ってきたから、明日までに目を通しておいてくれる？」
「ありがとう…！わぁ…わかりやすくまとめてくれてる…。」
「俺、一応リーダーだからね。」

資料を見るまりあに穏やかに微笑みかける、"加賀見"というらしい男を、明広はスマホを弄る振りをしながら観察していた。
赤味掛かった黒髪、177cm程の高身長で細身、品のある服に身を包んだ整った顔立ちの彼は、まりあを優しい瞳で見つめていた。