That's because I love you.
情事後。
まりあはバイトの時間が迫っているため早々にシャワーを浴び、服を着て身なりを整えていた。
明広も服を着ながら、その様子を少々申し訳なさげに見やる。

(…ヤるためだけに呼び出しちゃったな。強引気味だったし…まりあこれからバイトなのに、結構激しめにしちゃったし…。最近まりあを前にすると、何故か抑え効かなくなることが多いんだよな…。他の女に理性飛んだことなんか一度もないのに…。)

明広は取り敢えずのフォローを入れるべく、小さな後ろ姿に優しい声色で声を掛ける。

「…まりあ、今週末空いてる?最近ゆっくり会えてないし、何処か出掛ける?」
「…ごめんなさい。バイト先が忙しい時期で、シフト入れられちゃって…。」
「…そっか。まりあ体力そんな無いんだし、あんまり無理しないでね。」
「…はい…っ。」

明広が気遣いの言葉を掛けると、まりあはいつも通り嬉しそうに微笑んでくれた。
その可愛らしい笑顔に安心しながら、明広は続ける。

「そんなバイト頑張ってるなら、金にも余裕あるんじゃない?クリスマスは豪華なディナーでも食べに行くー?」
「わぁ…ほんと?楽しみです~っ。昼間は街のツリーや飾り付け見ながらお散歩したいです~。」
「…ふっ。散歩でいいわけ?」
「だってクリスマスは何処行っても混んでるから~。」
「僕達人混み嫌いだしね。ちゃんと暖かい服着て来てよ?」
「はぁ~いっ。」
「まりあが忙しいなら僕もバイト増やすか…短期のやつ色々ネットに出てたし。」
「クリスマス商戦ってやつですね~。」

二人で話しながら、部屋を出るべくドアへと向かう。
普段通りの空気で話せて安心していたのに、扉に手を掛けるまりあが何故か急に、儚く見えた。
この扉を開けたらまりあは自分の前から消えてしまいそうなーーーそんな錯覚を覚え、明広はドアノブを持つ彼女の手をぎゅっと握る。

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