That's because I love you.
「…望月さんはいつも、あなたに浮気されない様に良い子でいようと、無理に頑張っているらしいです。…そりゃそうですよね。自分を一度も"好き"と言ってくれない、しかも過去女癖がとてつもなく悪かった彼氏のことなんか、信じられる訳ないですし。」
「…………。」
「高橋さんは言ってました。望月さん、あなたと付き合えて最初は幸せそうだったけど、最近は何処か元気がないって。…俺はあなたに望月さんを幸せに出来るとは、どうしても思えないんですよ。」

加賀見はそこまで言うと、再び顔を上げ、真剣そのものの瞳で明広を真っ直ぐ見据える。

「…俺は望月さんのことが好きです。グループワークがきっかけで話す様になって…彼女の優しさ、可愛らしさに、心を奪われました。望月さん人見知りをする様で…最初はぎこちない様子でしたが、割とすぐに心を開いてくれました。…今ではいつも笑顔で、俺と話してくれてます。」
「………っ…。」

そう言った加賀見が一瞬、驚く程優しい表情をしたので、明広は思わず狼狽えてしまう。
加賀見が本気でまりあに惚れていることが、充分過ぎる程伝わって来たのだ。

「…近々、彼女に告白しようと思ってます。俺が、彼女を幸せにしたいんです。…御木本さん。望月さんを何とも思ってないなら、彼女と別れてくれませんか?」
「……どっちを選ぶかは、まりあが決めることだろ。」
「…それもそうですね。では彼女が俺を選んだ時、彼女を引き止めたりしない様に…それだけはお願いしますよ。」

加賀見は最後に「では失礼します」と言い丁寧にお辞儀をした後、踵を返し去って行った。
すると固唾を呑んで見守っていた森が、すぐさま喚き出す。

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