That's because I love you.
"俺は望月さんのことが好きです。近々、彼女に告白しようと思ってます。"
どこをどう見てもケチのつけようのない完璧な、自分よりうんと誠実でまともな男のその言葉に、明広の胸はズキッと痛む。
(…加賀見か…いかにもまりあが好きそうな"優しい男"だよな。…イケメンだし金持ちだし、お似合いじゃん…。)
(…まりあだって自分を好きって言う男の方が良いに決まってるよな。7ヶ月半も付き合ったのに、僕は一度もそれをまりあに言ってやれなかった…。…まりあがアイツに心変わりしたなら…受け入れてやらないとな。僕にそれを責める権利は無い…。)
(…受け入れられる?…手放せるのか…?)
"…だって…明広さんのこと、大好きだから…っ。"
彼女が何度も自分に言ってくれた言葉が、明広の脳裏に再生される。
「……まりあ…。…まりあはもう、僕にそう言ってはくれないのか…。」
まりあの可愛らしい笑顔が、自分が優しくしてやるとすぐに感激して流す涙が、自分が触ると一気に真っ赤になり恥ずかしがる表情が、次々と瞼の裏に浮かんでは消える。
(……別れる…?…まりあと…?)
ズキンズキンと痛む胸が、苦しかった。
今すぐまりあの元に駆けつけて、温かい小さな体を抱き締めたかった。
しかし自分にはもう、その資格はない。
自分の部屋で料理を作ってくれたまりあを駅まで送ろうと彼女を追いかけた時、彼女を抱いている時、デートの別れ際ーーー思えば何度も、何度も、まりあは自分に縋る様な、今にも泣き出してしまいそうな表情を見せていた。
まりあは自分を信じることが出来ず、ずっと苦しんでいたのだ。