That's because I love you.
幸せ過ぎてぼーっとしていたが、映画館の自動ドアを出た所でハッと我に返る。

(…またトリップしちゃってた…!ご、ごはんごはん!まず御木本さんに希望を訊いて、特に希望が無かったらまずパスタで良いか訊いて、ダメだったらハンバーグステーキ、それがダメだったらお蕎麦…!)

「…あの…っ!御木本さん、お昼食べたいもの何かありますか?」
「んー…何でも良いかな。君の行きたい店でいいよ。」
「あの、じゃあパスタとか好きですか…っ?」
「うん。良い店あるの?」
「この近くに美味しいって評判のお店があるんです…!」

まりあは鞄からスマホを取り出し画面に地図を出すと、張り切って明広を案内する。

「…あれ?あれ?ちょっと待ってくださいね…地図によるとここら辺のはず…っ。」

きょろきょろと店を探すまりあを、明広はじっと見つめる。

(…前に来た店とかじゃなくて、わざわざ調べてくれたのか…。)

健気な面を知る度、まりあがさらに可愛く見えてしまう。
明広が「ちょっと見せて」とまりあからスマホを取り上げ、地図を見ながら歩くと、すぐ店を見つけられた。
13時頃から昼食を食べ始める。
まりあは料理を写真に撮ってSNSに上げたりせず、食べ方もとても綺麗で料理を残したりもせず、明広は気分を害することなく料理を味わって食べることができていた。

(…美味しい。…この子…本当、元カノのバカ女達とは雲泥の差だな…。)

「おいし~、おいし~」と幸せそうにパスタを食べるまりあに癒されながら食事を終えると、コーヒーと一緒にデザートを食べながら先程の映画の感想を話した。

「私、中学卒業と同時に施設を出て…高校は寮だったんですけど、今はアパートで一人暮らししてるんです。だから映画に出てきたレシピとか料理のコツとか、とても参考になっちゃいました…っ。」
「…一人暮らしなんだ。」

(…それに施設…何か意外…。良いとこのお嬢様かと勝手に思ってた、見た目とかで。…施設…もしかして、本当にあの時の…?…まさかな。)

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