That's because I love you.
「…僕も両親居なくて、育ての親のオッサンと二人暮らしなんだけどさ。そいつ料理とか全然しないから、僕が毎日作ってるよ。」
「そうだったんですね…!御木本さんお料理出来るんですね…新たな情報知れて嬉しいです…っ。」

ほくほくと喜んでいるまりあに、明広は思わず小さく吹き出す。

(…両親居ないって所より、そっちかよ。)

「…何でそんなことで喜ぶの。」
「…ふぇ?だ、だって…。」

かぁっと頬を染めるわかりやすいまりあに、今度は苦笑してしまう。

「…他に何か知りたいことある?」
「い…いっぱいあります…っ。好きな食べ物とか…!」
「特に嫌いなものとかないし何でも食べるけど…きつねうどんはよく食べるな。好きかも。」
「きつねうどん~!簡単に作れておいしいですよねぇ~。」
「飲み物はコーヒーが好き。」
「はいっ!知ってま…」
「ん?」
「…いえ…っ!私も大好きなんです、コーヒー!」
「へぇ。食べ物は?」
「えっと…パスタとパンと、ケーキとレモン関係のお菓子と、お魚とハンバーガーとおにぎりと…」
「うんうん。要するに何でもガツガツ食べると。」
「はいっ!食べます~。」
「…まりあ、もう一つ訊いていい?」
「はい…!何でも…」
「男と付き合ったことある?」
「…っ…!!…な、ないんです…。男の人とお出掛けするのも今日が初めてで…。」
「だと思った。どう?初デートは楽しい?」
「…はい…っ!なんかずっと、夢の世界に居るみたいで…っ。」
「…ふっ。それはよかったねぇ。」

心配していたデートは、意外にも楽しいものだった。
他人と話すことが面倒で大嫌いな明広だが、まりあと話す時間だけは何故かとことん癒しに満ちていて、初めて会話が弾んだ。
話し込んでいるといつの間にか15時を過ぎていて、店を出るとビルや商店街をブラつきつつ買い物をした。
二人共に家事をしているということでお互いのお勧めの食材や生活用品を紹介し合いつつ、入り用な物を買った。
デートの直前まで"一日もどうやって間を持たせれば良いんだよ"などと考えていた明広だったが、実際まりあと居ると時間はあっという間で、気が付けば夜になっていた。

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