That's because I love you.
「…西沼、原口。何してんの。」
「よ…よっス、御木本ォ。お前が今の彼女全然紹介してくんねーからさぁ、ちょっと見に来たんだよ。」
「バイクに乗せようとしてたじゃん。まりあ嫌がってんのに。」
「んだよ、ちっとくらい貸してくれても良いだろォ!お前今までこんなことで文句言わなかったじゃ…」
「まりあが今までの軽い元カノ達と同類に見える?扱いも変わるに決まってるだろ。…金輪際、まりあに触らないでくれる?」
「……ッ!」

氷の様に冷たい明広の視線に射抜かれた二人は、固まってしまう。
明広が空手の有段者であることを知っている二人は、「わかったよ、クソ!」と吐き捨て、バイクに飛び乗り逃げて行った。
明広は自分の腕の中で未だかたかたと震えているまりあに声を掛ける。

「…ごめん、僕の知り合いが乱暴して。怖かったね。もう行ったから大丈夫、安心して。」

宥める様に頭を撫でてくれる明広の声と瞳は、男二人に対する時とは真逆の、優しいものだった。
まりあは安心と共に勝手に込み上げてくる涙をごしごしと拭いながら、首を振る。

「…明広さんが謝ることなんて何もないです…っ。助けてくれて…ありがとう…。」
「………。」

(…怖かったよな…まりあはこんなに小さいのに、あんなガタイの良い男二人に乱暴されて…。)

普段可憐な笑顔が眩しい彼女の儚く弱々しい姿に、明広の胸は締め付けられる。
思わずぎゅっと、震える彼女を抱き締める。

「…っ、…明広さ…。」
「…僕の部屋行って休もう。歩ける?」
「…はい…。」

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