That's because I love you.
「…じゃあ…、……。」

しかし今日は、何故かその言葉が喉から出て来なかった。

(…何で言い淀んでるんだ。生理じゃヤれないし、別に会う必要ないだろ…。……。)

しかしそんな考えとは裏腹に、ベッドで寝ている弱ったまりあが脳裏に浮かぶと、何故か胸がそわそわとして来てしまう。

「…まりあ、話すだけでもつらい?部屋で一人で居たい?」
『…ふぇ?』
「今日暇だし、まりあの部屋行こうか?夕ご飯とか作るの大変なんじゃないの?何か適当に買って行くし。」
『………。…来て…ほしいです。』

電話越しに、ぐすっ、と鼻を啜る音が聞こえてくる。
相変わらず自分が優しくするとすぐ感動して泣くまりあに、明広は無意識に頬を緩めていた。

「…じゃあ今から行くから。待ってて。」
『…はい…。ありがとぉ…っ。』

明広は歩きながら、スマホで"鉄分 食事"と検索する。
検索結果を参考に、駅ビルの地下にある食料品売り場でレバーを含む焼き鳥十数本と緑黄色野菜のサラダを買い、まりあの部屋へと向かう。
チャイムを鳴らすと、パジャマ姿のまりあが扉を開けてくれた。

「明広さん、わざわざ来てくれてありがとう…っ。」
「いーえ。まりあ、大丈夫?…ではなさそうだな。顔真っ青。」
「真っ青…!?そんな…どうしよう明広さんの前で…っ!」
「さらに青くなったし…。ほらほら、変なこと言ってないで早くベッドに戻りな。」
「へ、変なことじゃないです~…っ!私にとっては重大な…」
「はいはい。まりあは顔真っ青でも可愛いから大丈夫大丈夫。」
「ぼ、棒読みです明広さん…。」

すたすた、と部屋に入っていく明広の後にまりあも続くと、彼にベッドに押し込まれる。
明広はラグが敷かれた床に座ると、布団の端に頬杖をつき、まりあをじっと見つめる。

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