恋を知った日
階段を上がる事に疲労感と達成感を得る2人はゆっくりとした足取りで自分のクラスに到着した。
到着したと同時に少しざわめきが起きるのを夏葉は感じた。
「やっべ。中山さんと一緒じゃん。めっちゃ可愛い・・・」
「やっぱおしとやかだな〜・・・」
「尊い・・・」

と三者三様の意見が飛び交う。
なぜなら海はとにかくモテるからだ。
おっとりとした性格に加えて全員に優しい。
隠れながらもファンクラブも出来ているらしい。
(やっぱ海はモテるな〜・・・)

と遠くから声が聞こえる。
「なっちゃんちょっと行ってくるね。」

と遠慮そうに夏葉に言った直後に
「夏葉ー。おはよ。」

と健が話かけてきた。制汗剤のいい匂いが微かにする。

「おはよー!!今日も先輩にしごかれてたねー!!」
「もう慣れたよ・・・」
「後輩は今日から参加するの??」
「うん。エース取られんように頑張らんと。」
「ちゃんとがんばんなよー!!」

こんな他愛もない話が当たり前の生活だ。
健とは家族ぐるみで仲がいいためいつも隣にいるのが当たり前になっている。
「よーし号令するぞー。んー・・・とりあえず知ってるから青山号令しろー」

とやる気のない声をした担任の前田先生が来た。
「えぇー・・・私ですかー・・・」
「そうだお前だ。早くしないと平常点減らすぞー」
「えぇー・・・きりーつ。きをつけー。れい。」

と少し気だるげに号令をした。
今日は始業式の為前田先生は簡単な自己紹介と今後の動きについて説明しただけだった。

そして始業式を終え、各自部活に向かった。
夏葉はバレー部、海は吹奏楽部、健はサッカー部へ各自向かった。
特に夏葉と健の部活はお互い強豪校な為、新しい学年でも容赦なく最終下校時間まで練習した。
そしてお互いの帰る時間はいつも同じで場所も近いため、いつも2人で帰宅している。
「あー!!疲れたー!!お腹空いたー!!」
「そんだけ大きい声出せるなら大丈夫だろ。」
「健違うよー。気持ちの問題だよー!!」

今日から後輩達も参加しているためお互い慣れない指導で疲れているだろう。
帰り道にコンビニにより、簡単な軽食と飲み物を購入した。
片手にパンとビニール袋を持ちながらお互い話しながら歩いていた時、
「ねね。部活に可愛いマネージャーとか入った??」
「そういえば2人入ってたなー・・・。ちゃんと話はしてないけど。」
「おぉー!!いいじゃん!!狙っちゃいなよ!!」
「ばか。そう言うことはしないよ。」
「なにー??好きな人でもいるの??」
「いても夏葉には言わないよ。」
「えぇー。けちー。」

(だって俺が好きなのは・・・)
健は小学校からずっと夏葉に片思いをしている。
だが本人は一切気づく様子がない。
(夏葉はいつか俺の気持ちに気づいてくれるのかな・・・)
そんな事を考えていると家の前に着いた。
「じゃあ健また明日ねー!!」
「おぅ。じゃあなー。」

玄関のドアを閉じた健は何かを考えながらゆっくりと拳を握りしめ、唇を噛んだ。
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