夜を照らす月影のように#3
「……空の下輝き放つ雫かな」

メルキュールが口にした言葉に、僕は驚いた。その句は……。

「やっぱり、君は……藤村 零(ふじむら れい)……?」

僕が前世からの幼なじみの名前を言うと、メルキュールはふっと微笑むと「そうだよ」と僕を見つめる。

「会いたかった」

僕が微笑むと、メルキュールは僕に抱きつくと「僕もだよ」と呟いた。

「修也、今は何ていう名前なの?」

メルキュールは僕から離れると、にこりと笑う。

「……ノワール……小説家として、活動してる」

「へぇ……この世界でも、小説家として活動してるんだ。僕も、この世界でも詩人として活動してるんだ~」

「そうなんだ……ねぇ、メルキュール……じゃなくて、メルって呼んでもいい?」

「良いよ。前にいた町では、良くメルって呼ばれてたからね」

「ありがとう。メルは、どうして僕が太宰 修也だって分かったの?」

「……何となく。雰囲気で、そうなのかなって……」

そう言って、メルは微笑む。

「……何となくって……」

僕が苦笑すると、メルは「……という冗談は置いといて……」と笑みを崩すことなく僕を見つめた。

「……冗談だったのか……」

「うん。僕にも良く分からないんだけど……ここに来てから、気配に敏感になってね」
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