夜を照らす月影のように#3
「……気配に、敏感?」

僕が首を傾げると、メルは無言で頷く。

「もともと気配に敏感なんだけどさ、さらに敏感になったみたいで……ノワールの、この世界の人たちとは違う気配だってなぜか思ったんだ……どこか懐かしい気配だ、とも思ったよ」

メルは優しく微笑んだ後、少し何かを考え込んだ。

「メル、今からエリカさんとリオンを探さないと……」

「エリカさん……?リオン……?」

僕の言葉に、メルは首を傾げる。僕は、転生してからの話を簡単に話した。

転生してリオンの家族になったこと、本の世界に人々が閉じ込められる事件が起こっていること、僕に本の世界に入る力があること、ここは本の世界だということを。

「……ふむ。今、そんなことが起こってるんだ……でも、そのリオンさんって人とエリカさんって人を探しに行くのはおすすめしない」

「え?」

メルは顎に手を置いて、僕から目を逸らすと何かを考え込む。

「……この世界には、僕とノワールしかいないみたいだよ……その、物の怪ってやつも何匹かいるみたい」

「……そうなんだ……じゃあ、ボスを倒して向こうの世界に帰ろうか」

メルの言葉に僕がそう返すと、メルは「はーい」とぐっと体を伸ばした。
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