夜を照らす月影のように#3
「……ノワール、後は頼んだよ!!」

そう言って杖を振り上げたメルは、すぐに杖を振り下ろした。次の瞬間僕に向かって物の怪が飛んできて、僕は咄嗟に刀を薙ぎ払う。

物の怪は空気に溶け込むように消えていって、僕はその場に座り込んだ。

「……本当に、さっきの物の怪が親玉だったのか?」

僕がそう呟くと、僕の近くに着地したメルは首を傾げる。

「僕、今日で本の世界に入るの3回目なんだけどさ……前に戦った親玉と比べると、弱すぎる」

「……ふむ。でも、本当にあれが親玉みたいだよ。さっきの物の怪を倒したことで、さっきまで感じていた他の物の怪の気配も消えたし」

「……そっか……じゃあ、そろそろ帰ろうか」

僕は刀を消すと、立ち上がってメルを見つめた。メルは無言で微笑むと、頷く。

「彼らが最後に見たのは、透き通るほど綺麗な青空だった」

次の瞬間、僕の目の前は真っ暗になった。



「ノワール!」

目を開けると僕はリビングに立ってて、すぐにリオンが僕に飛びついてきた。その勢いで僕はよろめいてしまったけど、視界に見えたメルが僕を支えてくれた。

「あ、ごめん……つい……」

申し訳なさそうな顔をしながら、僕から離れたリオンは「なぜか、俺とエリカは本の世界に行けなくて……心配だった」と言う。
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