夜を照らす月影のように#3
メルが苦笑しながらリビングに入ると、エリカさんは「私、先生の小説も好きなんですけど、メルキュールさんの詩も好きなんです!」と早口で言う。

「ありがとう」

「俺、あの詩好き!何だっけ……月夜の庭……から始まるヤツ!」

「あぁ、夜の庭を犬たちが駆け回る様子を詩に書いたやつだね」

「それだ!」

「……」

楽しそうにリオンとエリカさんと話しているメルが、羨ましく感じてしまった僕がいる。そんな僕に気が付いたのか、メルは僕に近づいた。

「メルくんと、話し合った結果……メルくんは、今日からこの家に住むことになった」

突然の父さんの言葉に、メルは「そうだよ。しばらくの間ね」と微笑む。そして、メルはさらに僕に距離を近づける。

「……ノワール……いや、修也。というわけでお世話になります」

そう僕の耳元で呟いたメルを見てみれば、メルはイタズラっ子のような笑顔を浮かべていた。
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