俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「ハヤセ、息…くすぐったい、」
「…俺は何もしてません」
「あっ、喋らないでっ!」
「それはひどいですねお嬢様」
そういう意味じゃないのに…!
この至近距離で話されると息が耳にかかって、アルトの音色がダイレクトに届いてくる。
甘く優しい声を誰よりも最先端に聞いてしまうから。
「すごい心臓速いですよ、エマお嬢様」
「そ、そんなことないよ……!わたしいつも夜はひとりのときもこうなってるっ」
「…へぇ、ひとりの夜にこんなにも速いなんて。なにをなさっているのですか?」
「えっ、えぇ!?なにもしてないよ……!!嘘だよっ!今だけだよこんなの…っ!」
……あ、結局自白してどーするのわたし!!!
もうやだ…なんか遊ばれてる…。
ほら今だってくすくす笑っちゃってるもん。
「もう変なこと言わないでっ」
「変なこと?どんなことでしょう?」
「っ、寝て!?もういいから寝てっ!?」
「眠れませんね、さすがに。むしろ少し後悔してます俺」
後悔……?なんの……?
それを知りたくて少しだけ顔を向けてみれば、黒髪から覗く形の良い鼻筋が見えた。