俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




それをいつか誰かにしちゃうの…?

そんなの嫌だなぁって、考えただけで泣きそうになる。



「ハヤセ…、き、キスして、」


「え…?」


「さっきの、もういっかいっ」



お嬢様の命令なら応えるのが執事でしょ?
言うこと聞くのが役目でしょ?

そんなふうにズルい命令をしちゃった…。


それに自分がどんなに大胆な言葉を言ってしまってるのかも、わたしは理解できてない。



「…わかりました」



頬をそっと包み込まれて、近づいてくる影。ちゅっと弾けた可愛い音。

思わず目を閉じるけれど、わたしが望むものは与えられなかった。



「…おやすみなさいませ、エマお嬢様」


「ちがう、ハヤセ…、そうじゃない…」


「…違う?どこに欲しいのですか?」



だって今のはおでこだ。

そうじゃない、わたしは公園でのものが欲しいのに。



「っ…、い、いじわるだよハヤセっ」


「だって俺は変態執事ですから」


「……」



あ、なんか仕返しをされたような気がする。

わたしが前にそんなこと言ったから?
だからずっと根に持ってたの…?



< 118 / 340 >

この作品をシェア

pagetop