俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
それをいつか誰かにしちゃうの…?
そんなの嫌だなぁって、考えただけで泣きそうになる。
「ハヤセ…、き、キスして、」
「え…?」
「さっきの、もういっかいっ」
お嬢様の命令なら応えるのが執事でしょ?
言うこと聞くのが役目でしょ?
そんなふうにズルい命令をしちゃった…。
それに自分がどんなに大胆な言葉を言ってしまってるのかも、わたしは理解できてない。
「…わかりました」
頬をそっと包み込まれて、近づいてくる影。ちゅっと弾けた可愛い音。
思わず目を閉じるけれど、わたしが望むものは与えられなかった。
「…おやすみなさいませ、エマお嬢様」
「ちがう、ハヤセ…、そうじゃない…」
「…違う?どこに欲しいのですか?」
だって今のはおでこだ。
そうじゃない、わたしは公園でのものが欲しいのに。
「っ…、い、いじわるだよハヤセっ」
「だって俺は変態執事ですから」
「……」
あ、なんか仕返しをされたような気がする。
わたしが前にそんなこと言ったから?
だからずっと根に持ってたの…?