俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「ハヤセっ、ハヤセ、」



こーいうところがわたしは子供っぽいんだと思う。

言葉にできないからすがるように名前を呼んで、駄々をこねる小さな子供みたいに。


ぎゅっと服を掴んで、察してって訴える。



「…駄目でしょう、そんなことをしたら」


「なんで…?」


「あなたが思ってるほど俺は完璧じゃないんですから」



ちゅっ、ちゅっと。

ほっぺにおでこに優しく口付けられる。



「っ、ハヤセ、」



でもそれは泣いている小さな子供をあやすようなものに似ていて、それがわたしは嫌だ。

でもたまに聞こえる熱い吐息が、そうじゃないんだって言ってくるみたいで。



「抑えが利かなくなったら、俺はただの動物にしかならないんです」


「…動物は…優しいもん」


「それだけじゃない。男という動物は、あなたが想像するより遥かに危ない生き物なんですよ」



こんなに優しいのに……?

わたし、ハヤセにならどんなに乱暴されても嫌いにならない自信あるのに…。



「ぁ…っ!いたい、」


「痛いでしょう?…こんなふうに無防備してると噛み付くんだよ男ってのは」



首筋にピリリと走った。

聖なる夜に聞こえた低い声は、わたしを叱ってくれているようでいて。



「…いつかぜったい喰ってやる」



バリバリに本能を剥き出していた。



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