俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「柊 エマ!!」
「えっ、はい!」
「…夏休みはどう過ごしていたかね?」
まさかの名指しだ。
全校生徒の前で名指しされてしまうとは。
わたしに夏休みの出来事を聞いてきた学院長は、ファサッと揺れる髪をわざとらしく靡かせた。
「───あっ!カツラ変えたんだね学院長!」
「っ!!」
……あ、これは言っちゃだめだったかも。
お嬢様たちだけじゃなく執事に移って、そして先生たちにも広がった笑い声。
次第に顔を真っ赤にさせてゆく学院長。
ありゃ…?
褒めたつもりだったんだけど…?
「ひいらぎぃぃぃいい…!!!」
「あっ、いや!素敵ってことです…!ぜんぜんカツラって分からないよ…!!」
「2回も言うなぁぁぁああ!!!しかもそう言ってる時点で分かってるじゃないか!!!」
「あっ、……だって本当はちょっとズレてるもん…」
「なにぃ…!?」
そう、それは夏休み前だ。
学院長の頭に被せられたフサフサの昆布を剥ぎ取ってしまったのは。
なんでそうなったんだっけ、なんで昆布の収穫をしてしまったんだっけ、それすらも思い出せない。
でもそれも花瓶を割ってしまった今日のように、流れの事故だったように思う。