俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
お嬢様にしか見せない顔
ざくっ、ざくっ。
ぶわっ、ぶわっ。
「雪ーーーっ!!」
目が覚めれば辺り一面は白銀の世界。
部屋から覗いた窓の景色に寒さなんか吹き飛んでしまって、着替えることすらせずにマンションを飛び出した朝。
「すごいっ!つめたい!ふわふわっ」
まさかこんなにも積もってくれるなんてっ!
誰も足跡を付けていない雪の絨毯にわたしだけのスタンプがひとつ、またひとつと増えてゆく。
「エマお嬢様…!」
「ハヤセっ!」
そのスタンプを辿ったのだろう執事が1人、小走りに駆け寄ってきた。
「風邪を引いてしまいます。というより探しました、」
「ごめんねっ!いっぱい積もってたからつい!」
呆れた返しはされない。
微笑むように瞳を細めて、わたしの冷えた頬に重ねられた手。
少しつめたくてぶるっと身震い。
「朝食の支度ができました。さぁ戻りましょう」
「えっ、でもまだ雪だるまが途中なの!」
「あとで一緒に作りましょうか。俺も作りたいんです」
なんて言われてしまえば。
しょうがないなぁなんて、了承してしまうわたしはやっぱり単純だ。