俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
何気なく言った言葉だった。
本当に何気なく放ったのだ。
そんなわたしの言葉に、泣きそうな顔をして笑ったハヤセ。
「…そうですね」
確か昔は泣き虫だったと前に言っていたっけ…。
………ん?
いやいやそうじゃない。
わたし今、けっこう恥ずかしいこと言ってない……?
「あっ、あれだよ!?変な意味じゃないよ…!?そう見えるなぁって話で…っ!」
「俺は変な意味を想像してました」
「………えっ!?」
そうなの!?
というか変な意味って……どんな意味…?
こーいう台詞をサラッと言っちゃうところ、ハヤセってズルい。
「さぁそろそろ学校へ行きましょう」
「ハヤセっ!変な意味ってなに…!」
「知りたいですか?…それは俺が教えることになりますが」
そっと耳元に寄せてくすくすと意味ありげに笑ってくる。
バチッと合わさった目が、執事ではなく男の人のものに感じて。
「い、いまはだめっ!」
「…なら、いつかはいいんですか?」
「っ、クロとシロにご飯あげなきゃ…!」
ドキドキがどんどん熱を増して、雪なんかぜんぶ溶けちゃいそうだ…。
でもそれが逆に楽しくて嬉しくて。
まぁ半分以上はからかわれてる気がするけど…。
「では来月の舞踏会に向けてのレッスンを始めるわ!」