俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
そんなふうにわたしを心配してくれるのはハヤセだけだ。
約束したとおり執事を辞めることなく続けてくれている。
こんなお嬢様の執事を……。
「わたし、雑巾持ってくる…」
「いえ。ここは俺にお任せください」
「ううん。…ダンスよりこっちがやりたいの」
小さな声で細々と伝えれば、困ったように表情を緩めながら理解を示してくれる。
それなら一緒に床を拭きましょうか───と。
そう当たり前のように言ってくれる彼の優しさは、やっぱり無理してない?って心配になってしまう。
「そうだわ!早瀬くん!私のお相手してくださる?」
花瓶のことは忘れたらしい…というか、そこまで気にもしていないらしい。
ダンスを教えてくれる若い女教師は、パチンと両手を合わせて、ハイテンションにハヤセを見つめた。
「…俺、ですか?」
「ええ!今だけでいいの!生徒に見本を見せなくちゃ!」
途端にクラスメイトは瞳をキラキラさせて期待の眼差しだった。
Sランク執事の舞踊が見られるなんて、わたしも少し気になるなぁって思ってたけど…。
「きゃーーっ!すごいですわ!先生とお似合いねっ」
「まるでおとぎ話の王子様とお姫様みたい!」