俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
『メイクも服も大切だけど、やっぱり男に抱かれることよねぇ~』
と、それは女の気持ちが誰よりも分かるオネェタレントの言葉。
抱かれること…?
それで綺麗になれるの…?
抱かれるって、なに……?
「えっ、ハヤセ!男に抱かれれば女の子は綺麗になれるの!?」
「……」
あれっ、無言……?
いやちがう、言葉を失ってる…?
「男なら誰だとしても抱いてもらえれば綺麗になるの…?」
「なりません。なるわけないです」
「あっ、そうなの…?じゃあ誰だったらいいの?海藻を被った人?」
「それは絶対に駄目です」
え、じゃあもしかしてすっごいお金持ちの人とか…?
そういう人にぎゅーって抱いてもらえば、同じくらいの富が与えられるってこと…?
それかすごい頭が良い人…?
どういう人にならいいの?
「わたしその人に抱いてもらいたいっ!」
「───…はあ、」
初めてため息を吐かれました…。
確かにわたしは今、珍しい人からの珍しい音を耳がキャッチしました。
「…エマお嬢様の場合は、俺です」
「え…?」
「俺でなければ駄目ですから」