俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
そうなの……?
じゃあわたし、ハヤセに抱かれれば綺麗になる?大人っぽくなれる…?
クラスメイトみたいに、恵美先生みたいに。
それにハヤセならどんなことだとしても嫌じゃない。
「ハヤセっ!わたしを抱いて…!」
いつも求められるおねだりをするみたいに、まじまじと見つめながら言っちゃって。
彼の動きは狂いなく止まった。
え、……だめなの…?
だってハヤセにしかできないことなんだよね…?
「……本気で言ってるんですか」
「うんっ!本気だよ…!わたし綺麗になりたいもん…!」
「わかりました」
まさか肯定してくれるなんて。
こんなにあっさり受けてくれるなんて。
手作業を止めてわたしのほうへ近づいてくると、少し乱暴にリモコンを操作してテレビを消してしまって。
「え、ハヤセ?テレビ───わっ!」
すぐに抱き上げられた。
お姫様抱っこではなく、そのままひょいっと。
「ハヤセっ?どこ行くの?」
わたしの部屋じゃなく、余計なものは何ひとつ揃えていない執事の部屋。
殺風景だけどフローラルの香りが広がる部屋だ。