俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
ハヤセだよ、ハヤセに見せたいの。
……って、あれ?怒ってる…?
なんかテンションと声が暗くなってるような気がする…。
「誰ですか」
「それは…秘密っ」
「なら無理やりにでも言わせますが」
うん、ハヤセにならいい…。
何されたって絶対ぜんぶが嬉しいに決まってる。
そう伝える代わりにぎゅっと襟を掴めば、その先に進む動きを諦めたように身体がぎごちなく離された。
「…困ると、前に言ったでしょう」
「え…?」
「どうしてそんなに……俺を、困らせるのですか」
そんなつもりない。
わたし、ハヤセを困らせてる…?
迷惑かけちゃってる……?
「エマお嬢様、…俺だって執事の前に男なんです。そこまで完璧ではないと前に言ったじゃないですか」
「う、うん…」
「嫉妬だってします、あなたのことも自分のことも上手く扱えないときだってある。
…俺はエマお嬢様が思ってるほど、優しくもない」
見下ろしてくる2つの目が泣きそうに揺れている。
だから思わず手を伸ばすと、触れた頬がピクッと動いた。
「わたし、どんなハヤセを見ても嫌いにならないよ…?
ちょっと怖いときもあるけど、ハヤセはハヤセだもんっ」
「なら、…俺の言うことを聞け」
「わっ」