俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
さすがはSランク執事だ…。
お姉ちゃんとは似ても似つかないと思っていたのに、今のわたしなら姉妹って呼ばれるような気もする。
それくらいハヤセはわたしを大変身させてしまった。
特別濃いわけではないのに、まるで元ある素材を十分に生かすメイク。
「仕上げにリップを付けさせていただきますね」
「あっ、うんっ」
はい、仕上げのリップを付けられます。
ぜひお願いいたします、こんにちは。
なんかもう嬉しさとワクワクと緊張が入り混ざって交差して、頭おかしくなりそう…。
「口、閉じてたほうがいい?」
「…どちらでも大丈夫です。リラックスしていてください」
って、言われてちょっと考えた結果。
ポカーンって開きっぱだと、それはそれでアホな子になってしまうから。
きゅっと結ぶように力は加えすぎず大人しくするほうを選んだ。
するとハヤセは小さなパレットを取り出して、リップ用の筆を手に。
───…と、それを1度置いた。
「んっ…?」
向かってくるは指。
わたしの閉じた唇をなぞるように、人差し指と中指が触れてくる。