俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「これは誰かに見せたら駄目なんです。…俺だけが知っていたいものだ」


「っ、」



サラッと、うなじを隠す髪が持ち上げられて。

露になった首筋を見た彼は、ゴクリと唾を飲み込ませた音を出す。



「ぁ……っ!」



───…噛まれてる。

というより、吸われてる……?
え……ハヤセ吸血鬼になっちゃってる…?



「んっ、ハヤセ…っ?」



少しだけ痛い…。
ピリリッと甘さの中に迸る痛み。

それなのに止まらない、止まってくれない動き。

ふわっと揺れた黒髪が頬に当たってむず痒くて。



「ハヤセ…、まって、っ、」



吸われた場所を追いかけるようにぬるっとした生暖かい感触。

ペロッと可愛いものじゃなくて味わうそれは、それこそ食べられちゃうみたいだ。



「ひゃっ…っん、」



そのまま痛みを消すように響かせてくるリップ音。

そんな詰め込まれたハッピーセットがもう
1度最初から繰り返された。



「───…すみません、ちゃんと理性はありますから」


「え、…うん」


「理性がある上で、しました」


「あ、……うん」



それをわざわざ言ってくる丁寧な執事。



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