俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
思わず単調な返事を繰り返すことしかできない…。
こんなのそれしかできないもん…。
「エマお嬢様、この意味が分かりますか?俺はあなたに今、そうしたくて行動したんです」
「…く、首の血を、吸いたかったの…?」
「……はい」
あ、ハヤセ今なんか諦めたような返事した…。ぜったい諦めた。
なんかもう「それでいいや」って一瞬でも思ったよね……?
でも鏡の前に映るわたしの首元、しっかり付いている赤色ふたつ。
それを付けたのは蚊なんかじゃない。
わたしの隣にいるSランク執事だ。
「開催中、執事は見守ることしかできませんから。…せめてものマーキングです」
「ま、マーキング……」
「あなたは俺のお嬢様ですから」
ドキンッ。
いまの、聞こえちゃってない……?
それくらい大きい音がしたわたしの心臓。
俺の、俺の……って、ハヤセはズルいよ。
どうしてわたしが喜ぶ言葉を、わたしが欲しい言葉をそんなにも知ってるの…?
「これは俺からエマお嬢様にプレゼントです」
仄かに色付いた自分の唇に見とれていると、次にハヤセは取り出したネックレスをスムーズに付けてくれた。