俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




くいっと腰が引かれた。

力なく寄りかかれば、そのまま気にすることなく今より密着して続けられる。



「またふたりで一緒に本物の四つ葉のクローバーを探しましょう」


「……うん」



でもハヤセ、わたしがこの学校を辞めちゃったら一緒にはいられなくなっちゃうよね…?

あなたは誰か他の生徒の執事になるのかな…。それこそもしかすると、お姉ちゃんの執事になっちゃうかもしれないね。


そしたら生徒たちだってみんな納得だ。

本来はこうあるべきだったんだって、きっと声を揃えて言うよ。



「もうすぐ2年生ですね、エマお嬢様」


「…うん」


「春休みは一緒に回転寿司に行くんですよ?」


「…うん、」



ハヤセはどうしてこんなお嬢様に優しくしてくれるの…?

もっと怒っていいのに。
なに失くしてんだよって、言えばいいのに…。



「ハヤセ、」


「はい?」



その返事だっていつもよりずっとずっと甘いものだ。


あなたもわたしを可哀想だと思った…?


でもね、わたしはそれで嬉しいんだよ。

“憐れだ”って見られるよりは“可哀想”って見られたほうが全然いいから。



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