俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




うん、本当に止まない。
少し遠くで雷とかも鳴ってるのかな…。

急に降ってきたもんね、通り雨だったらいいなぁって思うけど。


あ、そうだ。



「キツネの嫁入りって言うんだって」



どうしてキツネなの?って不思議だけど、その言い回しにすると可愛いから許せちゃう。

キツネさんがお嫁に行ったんだね、今日は。



「わたしは…お嫁さんなんかなれなくていい」



そんなんじゃ立派な花嫁になれないぞって、いつもいつも先生に言われてた。

その度にわたしは今みたいなことを言ってたなぁ…。



「でも不思議だね。ハヤセと出会ってからそれを考えることすら無くなったんだよ」



それはあなたがわたしを“ただのエマ”として見てくれるからだ。

お姉ちゃんの代わりとか、柊家の娘とか、そう見られない毎日に変わって。


吹っ切れていたような諦めから、少しだけ自信のようなものが身に付いてくれた。

成績が良いって言ってくれたのもハヤセ、そのままのわたしが素敵だって言ってくれたのもハヤセ。



「…俺は最初からエマお嬢様を“立派な花嫁”にしようとは更々思っていません」



この人はたまに執事がそれを言ってもいいの?ってことを言ってくる。

それが面白くて楽しくて、それもわたしに合わせてくれるのかなって思ってた。


でも、そうでもないらしい。



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