俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
あ、笑った…、ぜったい笑った…。
でも顔が見れない。
そんなのは見ないほうが心臓のためだぞって本能が告げてくる。
「エマお嬢様は何が食べたいですか?」
「わ、わたしは……イクラ、」
「イクラ?いいですね。俺も好きです」
「わ…っ、わわっ!」
す、すき……。
そうなの、イクラ好きだったの、四つ葉とイクラが好きなんだね。
それを耳元で言う必要はありますか…?
そんなアルトなウィスパーボイスで囁く必要は…ありますか……。
「ハヤセ、近いよっ、」
なんていうか、わたしとの距離もそうなんだけど…。
何よりその反対側のおばちゃんのことだ。
ハヤセにわざとくっついてるような気がする…。
この機会をうまーく使ってイケメンに触りたいおばちゃんがいるもんっ。
「…だから目の保養が必要なんです」
「目の保養って…、」
「こんな近くに何よりも可愛い存在がいますから」
わたしを見てる……?
こ、こんなのむりぃぃぃぃぃっ!!
それはそうと───
「これ自由に取っていいの!?」
「そのようですね」
「1皿100円!?安いっ!!」
夢みたいだ。
お寿司が1皿100円だなんて…!!
わたしが知っているお寿司は、8貫乗ったお手頃価格でも数万円はするというのに。