俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
なんだそれはと。
お茶注ぐ係ってなんだって、思うはずなのに。
彼は優しく微笑んで「お願いします」なんて言ってしまう人だから。
「エマお嬢様、…アリサ様は新学期から戻ってこられるそうです」
「えっ…」
思わず箸からお寿司がぽろっと落ちた。
お皿に戻ってくれたから問題はなかったけれど、その会話の内容が衝撃的すぎて。
「え、戻ってくるの…?面会もできないくらい重症って言われてたのに…」
「ずっとリハビリをしていたそうなんです。ですが、もう1度3年生として復帰できるようになったと」
「……」
ここは喜ばなきゃいけない。
喜ぶところなんだ、普通は。
それなのにどうして複雑なんだろう、どうして素直に喜べないの。
お姉ちゃんが学校に戻ってくる。
そしたらわたしの立場は無くなってしまう。
「エマお嬢様、大丈夫です」
そんなわたしの不安を安心へ変えてくれる存在。
気持ちを言わなくてもすべて察してくれちゃう人。
その一言が何よりも欲しいものだった。
この執事はずっとわたしの執事だから。
おばあちゃんになっても、100歳になっても一緒にいてくれるって約束した。