俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
「わたし、会いに行ってくる…」
「え…?」
「新学期が始まる前に柊の屋敷に行ってくる!」
学校は全寮制だし、わたしは柊家の中でも気にもされていないポジションだったから。
高校に上がってから実家に戻ることはとくにしていなかったけど、もしかしたら今はお姉ちゃんがいるかもしれない。
仲が悪いわけじゃないのだ。
だけどいつからかお姉ちゃんとわたしには壁ができてしまって。
でも今ならちゃんと話せるかもしれないって、ハヤセがいるからそう思えるようになった。
「では俺もご一緒に、」
「ううんっ。わたしが1人で行く。…ハヤセはマンションで待ってて欲しい」
おかえりって、言ってほしい。
たとえわたしがお父さんに呆れられた目で見られたとしても、きっと婚約も破棄だと思うから、余計に怪訝そうに見られてたとしても。
それでも帰った先にハヤセが待っててくれるだけで、どんなことだって乗り越えられるような気がする。
「…わかりました。エマお嬢様、せーの、」
「えいえいっ、おーーーっ!!」
それがわたしとハヤセの“一緒に頑張ろうぜ!”の、合図───。