俺の言うとおりにしてください、お嬢様。
だからわたしがもう早乙女に関与しなくて良くなるはずなのに。
というより、早乙女からは何も聞いてないの…?婚約破棄じゃないの……?
まるでいつもと変わらないお父さんが目の前にいるものだから。
相変わらず書斎机に向き合って、わたしの顔すら見ない男だ。
「アリサは少し事故の後遺症が残った。だから早乙女家に嫁ぐのはエマ、お前で進める」
「……そんな…」
ごめんお姉ちゃん。
今のつぶやきはお姉ちゃんに事故の後遺症が残ったことじゃなく、わたしの婚約が破棄されていないことに対してだ。
そんな……どうして…。
それくらい早乙女 燐が怒ってるってこと…?もしかしてあれはあいつに火を付けてしまった逆効果…?
「お父さん、早乙女から何も聞いてないの…?」
「なんの話だ。俺は忙しい、用が済んだなら出ていけ」
わたしとお姉ちゃんの母親は違う人だ。
お姉ちゃんのお母さんは、わたしが生まれる前に病気で他界したらしい。
そしてわたしは、なにかの間違いでお父さんが一般庶民の女性を孕ませたときにできた子。
その結果、この格差だ。