俺の言うとおりにしてください、お嬢様。




「俺はエマお嬢様のことが…執事としてではなく───」



ブーーッ、ブーーッ。


その振動はわたしのスマートフォンの着信音じゃない。

思わずピタッと、動きも言葉も止まったハヤセ。


ソファーに仰向け状態のわたしの上からゆっくり退くと、スマホを耳に当てて細々と会話を繰り返した。



「───…え…?」



珍しい、ハヤセがそんなにも隙だらけに驚いてるなんて。


その先で何を言われたの…?


たったいま与えられ続けていた熱が一気に冷めてしまったような空気感に、どこか虚しくて切なくて、寂しい。



「……わかり……ました、」



一瞬わたしに視線を移してから反応すると、そのままピッとスマホは切られた。


静寂がもっと静寂を包んで。

呆然と見つめつづけるわたしに気づくと、はだけた服を優しく整えてくれる。



「…新学期から柊 アリサ様の専属執事になれとの命令が下されました」



わたしの返事は無言だった。

ちゃんと聞こえてはいた、いたけど言葉が出なかったから仕方ない。


どうして?なんで?

なんでハヤセがお姉ちゃんの執事…?
命令って誰の……?



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